海辺の生と死。『未来住まい方会議』と『幸せな死に方』について(前編)

コラムを連載させていただいているWebマガジン『未来住まい方会議』を運営しているYADOKARIさんからご恵投いただいた『未来住まい方会議』と月極本2『幸せな死に方』2冊について。


写真はうちの目の前の浜で、加計呂麻島生まれの島尾ミホさんの幼少時のエッセイ『海辺の生と死』とともに。


『未来住まい方会議』はこちら→

http://3rinsha.co.jp/mirasuma/

月極本2『幸せな死に方』はこちら→

http://yadokari.net/tsukigime-books/43950/


『未来住まい方会議』は2ヶ月ほど前に拝読したんだけど、なかなかレビューが書けなくて。そうしたらその後、月極本2『幸せな死に方』が届いて、その理由が何となくわかった気がしました。


『未来住まい方会議』は、今まであまりYADOKARIを始めるまでのことを語ってこなかった2人が自分たちのことを話している本。


YADOKARIが始まるまでのあれこれから、共同代表の一人、ウエスギさんの大学時代の治験にまで手を出してメイクマネー→虚しさ→禅寺へ行く話とか、さわださんの野球少年→挫折→ミュージシャンを目指す→挫折→廃人同然→再度上京など、少年時代から現在にかけての話まで盛り込まれている本です。


YADOKARIの運営する『未来住まい方会議』で連載をするようになってから、知人に「彼らは一体どういう人たちなの?」と聞かれることが多くて。


「東日本大震災を機に自分の暮らし方を考え始めて、最初はファミレスでいろいろ話してたところから、自分の仕事をしつつFacebookで毎日世界のタイニーハウスやモバイルハウスの事例を投稿してたのが始まりみたいよ」


全部本当なんだけど、多分、全然わかんない。

私のざっくりした説明もいけなかったのかもしれませんが、でも、このざっくりした感じもある種の本当。


なんて思いつつ、私も「YADOKARIのこれまでがいつかまとまった形で見たいな」と思っていたわけです。


『未来住まい方会議』はその彼らの今までの冒険譚が書かれている本だと思います。

ライフスタイルについて語るって、今までの自分たちがどういう暮らしをしてきたかを語ることでリアリティが増すと思うんですよ。


この本の中の、リノベーション住宅推進協議会が主催する「リノベーションアイデアコンペ」に参加したとき、「君たちのアイデアはただの概念でしかない。ただの夢を描いた一枚だ」と言われてからの話で印象に残った一節を引用します。


そう、今はまだ夢でしかない。
ちょっと話は逸れるけど、夢について思うことがある。
「最近の若者は夢がない」と言われたりする。でも、反論するわけではないけれど、かつては、自分であえて夢をもたなくても、社会が夢を見せてくれた時代があった。経済は好調で、給料は上がっていく時代だったから、真剣に仕事さえしていれば、いまはアパート暮らしでも双六のコマが進むように、いつかは一戸建てに住める。それはほとんど既定路線だった。夢のマイホームなんて言葉があったらしいが、限りなく現実に近い「夢」だった。
こういうことを言うのは、上の世代が恨めしいわけじゃなくて、ちょっと羨ましいからだ。だって、この時代、誰が夢を見せてくれる?


拡大や発展方向に夢を見られない世代論は、ここ最近、よく聞かれるものではあります。けれど、だからこそ、こうして彼ら自身のライフストーリーが書かれ、等身大の言葉で綴られることによって、それがよりリアルに、共感を呼ぶものになっていると思います。


先日、東京に行った時に、永年のお付き合いの紙媒体でバリバリやっている編集者さんとお会いした時、こうおっしゃってくれて。

「君の連載で『未来住まい方会議』を知ってさ。俺、すごい好きなんだよ。紹介される事例を毎日見てる」

編集者の方は50代半ば。私が20代の頃、憧れていた雑誌でお仕事をする機会を頂いた方です。私は、その方がそう言ってくれたのがとても嬉しかった。

その編集者の方は年代としては、拡大や発展方向に進んでいた時代を過ごしてきた方です。けれど、今はまた違うものの捉え方や見せ方があるということを同じ感覚で捉えてくれているんだな、と思ったから。


この『未来住まい方会議』でも書いてあるんですが、サザビーリーグが主催する「Lien PRPJECT」でYADOKARIの二人が出したプランに審査員の方から「そもそもミニマルライフは人間の欲求に反しているのではないか」という意見があったそうで。


それに対して彼らはこう答えます。


「『人間の欲求』といっても、世代によって全然欲するものが違うんです。もちろん、ぼくらはお金や物なしで生きていくことはできない。でも、それは最上位の欲求ではなくて、ぼくらは、自分と同じ価値観で集まれるコミュニティを何より欲しているんです」


そう、実はこの話は、月極本2「幸せな死に方」にもつながるものだと思うんだよね。

2冊の話を1記事にまとめようと思ったんですが、長くなったので、月極本については次回に。