腸内細菌と十牛図の話。HANDCARCHIEF BOOKSについて。

葉山にある先日創刊したHANDCARCHIEF BOOKSさんの本、

『僕が買っていた牛はどこへ行った?』、『大切なことはすべて腸内細菌から学んできた』

を拝読しました。

こちらも先日紹介したYADOKARIの『月極本』と同様、自費出版の本。

編集部は先日、関東に行ったときに友人と貸し切りでパーティをした葉山のアトリエ、

CONER BY SHORT FINGERにあります。

こちらの本は昨年の12月25日、ちょうど福岡へ数日旅行に行く前に届きまして。

せっかくだから、旅先で読もうと荷物に入れて、飛行機の中や移動中に読みました。

ハンカチーフブックスという名前のとおり、軽くて邪魔にならない手触りです。


布張りや革張りの重厚な本も、もちろん大好きなんだけど、

最近、物質として手に取るのは軽い本が多い。

そして、誰かに貸したくなる、あげたくなる本が多い。


先日の記事でも書いたけれど、電子書籍は「物質として触れない」ということのほかに、

人にあげたり、貸したりできないところもネックだな、と思っていて。

かといって、既存の本だと何だか「人に貸す」「あげる」ことが

いまいちフィットしないんですよね。感覚的に。

たぶん、「売る」「得る」概念で作っている本が多いからだと思う。


もちろん、収益を得ないと出版社は存続できないので仕方がないのですが、

果たして「売る」「得る」ことは「本」の絶対的な目標なのか? 

とわたしは結構疑問に思っていて。

(そのへん、『Rhythm』で始めた新連載『島の、リズム』でもちらりと書きました)


「はいはい、こういうのが売れるんでしょ」で作られた本は作るほうも摩耗するし、

読んでくれる人を信じてないってことだし、

書き手としては信じられない相手に向かって書くのはもう摩耗というか消耗だし、

というところもあり、ぶっちゃけ、わたしもここ数年、疲れ切っていたんです。


だから、最近、自費出版やクラウドファウンディングで資金を集めて本を出す人が周囲に多くいて、

それが何だか軽やかで楽しそうで嬉しくなるのかもしれません。


さて、この2冊『僕が飼っていた牛はどこへ行った?』と

『大切なことはすべて腸内細菌から学んできた』について。


『僕が飼っていた牛はどこへ行った?』は

禅の悟りに至る道のりを10枚の絵で現した十牛図についてのお話。

禅僧の方とサイエンスライターの方の対談を本に起こしたものです。

「宇宙全体が生きている」という仏教の見方をわかりやすく語るお二人は、

仏教と科学両面から同じことを言っていて、それがとても楽しそうでした。

大人が読むのはもちろん、中学生、高校生にもぜひ読んでほしいな、と思う本です。


『大切なことはすべて腸内細菌から学んできた』は

人生を腸内細菌の研究に捧げてきた研究者、光岡知足さんの著作。

腸を小宇宙ととらえてヒトと菌の関わりを解き明かしていくこの本は、

ミクロからマクロへ視点がいく。


ちょうどこの本を読んでいるとき、最近お世話になっている

北九州ひびき野にあるハイブリットラボFILTOMさんにお邪魔したんだけど、

そこの方々も同じようなことを言っていて。

科学を突き詰めると、やっぱり宇宙に思いを馳せることになり、

ていうか、自分の細胞自体がほんとは小宇宙。


「パラダイムが変わるのは意識の世界のこと」

『僕が飼っていた牛はどこへ行った?』


「この世界に生きていること、そこに何らかの法則が働き、

様々な現象があらわれていることを自分なりの方法で感じとり、

みずからの生き方や考え方を深めること」

『大切なことはすべて腸内細菌から学んできた』


この言葉が印象的でした。


世界はすべてつながっている。


本当はみんながそれを知っている、とわたしも思います。

本にはすてきな葉山の風景の写真のポストカードとしおりつき!

こういう細やかでかわいいしつらえも、すごくうれしいよね。